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2018年のクリップ一覧[18件]

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《カテゴリ:既刊・通販

メモロス 68P 600円 2011/08/13発行
幼馴染み・After 32P 300円 2019/12/28発行 新刊
 ※再録集6に含まれます
0084-0087 52P 500円 2011/08/13発行
0087 vol.1 52P 500円 2011/11/03発行
0087 vol.2 52P 500円 2011/12/30発行
0087 vol.3 52P 500円 2012/05/04発行
0087 vol.4 48P 500円 2014/12/28発行
0087 vol.5 32P 300円 2016/08/12発行
0087 vol.6 20P 200円 2017/12/30発行
4つの名前 -0087-(文庫サイズ)
       20P 100円 2019/12/29発行
0087 vol.7 32P 300円 2019/08/10発行
再録集1 172P 1500円 2011/08/13発行
再録集2 140P 1000円 2012/12/29発行
再録集3 244P 2000円 2017/12/30発行
再録集4 168P 1500円 2018/08/11発行
再録集5 136P 1000円 2018/12/29発行
再録集6 182P 1800円 2019/12/28発行 新刊

No.4 : Posted at 2018年08月19日 16時33分30秒 - Parmalink - (Edit)

▶通販について

《カテゴリ:既刊・通販

既刊一覧、既刊詳細をご覧の上、ご希望がありましたらメールでご連絡下さい。
(まずはご希望の本の種類と冊数をご連絡下さい。当方で料金+送料を計算して返信させて頂きます)

現在多忙につき通販作業、メールの返信は多少お待たせすることがございます。ご了承の上お申込みください。
(メールの返信は夜中や明け方になることもあります。スマホなどの着信設定にご注意下さい)

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レターパックプラス(520円)は追跡有り+配達員による手渡し
レターパックライト(370円)は追跡有り+ポストイン
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となります。それぞれ送ることができる『厚み』と『重さ』が違いますので送付方法はお申込みいただいた本の冊数で決まります。

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No.17 : Posted at 2018年08月19日 23時02分25秒 - Parmalink - (Edit)

▶コミックマーケット95

《カテゴリ:イベント参加&新刊

2018年12月29日(土)
東京ビッグサイト 東2ホール N-23b
サークル名【Come Come Come】

新刊情報

【4つの名前 -0087-】

文庫サイズ 20P (シャア×アムロ小説)本
2018年12月29日発行  100円

【再録集5】

A5 136P (シャア×アムロ小説)本
2018年12月29日発行  1000円
※書き下ろしはありません

No.20 : Posted at 2018年12月27日 03時57分22秒 - Parmalink - (Edit)

▶4つの名前

《カテゴリ:0083シリーズ@既刊詳細

■シリーズの番外編的な話

■『THE ORIGIN』でシャアがシャアの名前を手に入れた経緯とジンバ・ラルの扱いについて残念に思ったゆえの捏造作品です。

■サンプル

 それは宇宙世紀0086。アムロ・レイのシャイアンの屋敷に、ソロモンの悪夢と言われたアナベル・ガトーと元連邦軍パイロットのコウ・ウラキが居候のような形で同居し、そこにかつて赤い彗星と呼ばれたシャア・アズナブルが度々顔を出すという奇妙な生活が間もなく終わりを告げようとしていた頃。


「どうしてドゥエ・ブルーノなのだ!?」
 シャアは明らかに『納得しかねる』といった表情でアムロを問い詰めた。
「いや、特に拘りがある訳じゃないんだけど…」
 シャアの勢いにむしろ困惑した様子でアムロが肩を竦める。
 クワトロ・バジーナという偽名でシャアがエゥーゴに参加することが決まっており、続いてアムロもエゥーゴへの参加を決意したのだが、現在のティターンズとエゥーゴの組織力や戦力差を考慮して、アムロ・レイがエゥーゴに参加することは当面公表しない方が良いのではないかという話しになり、ならばアムロにも偽名の身分証明書が必要であろうということになった。それについてはシャアに当てがあるということなので任せることになったのだが、名前をどうするかという話しになってシャアとアムロが揉めたのだ。
「偽名と言われても特に思いつかないから、貴方が4(クワトロ)だから僕は2(ドゥエ)で良いかな…とか」
「そんな安易な」
 横から口を挟んだのはガトーである。別にシャアの肩を持つつもりはなかったが、自分が名乗る名前なのだからもっと慎重に考えるべきだ、と生真面目な彼らしい主張をした。
「そう言われても、そんなに長期間名乗る予定でもないんだから」
 事実、アムロは自分の偽名に何の拘りもなかったので、シャアがその名前はどうしても気に入らないと言うのなら変えても良かったのだが、シャアとガトー二人から責めるように言われては何となく面白くない。素直に別の名前を考え直すか、意地を張り通すか―――迷った、というよりもこの場にいるもう一人はどう思っているのか少しばかり興をひかれて視線を向ける。
「あ…あの、僕はアムロさんの偽名以前に、どうしてシャアさんの偽名が4(クワトロ)なのか分からないんですけど」
 アムロの視線を受けたコウは素直な疑問を口にした。
「アムロさんの2(ドゥエ)に負けるのが気に入らないなら最初から4(クワトロ)じゃなくて1(ウノ)とか0(ゼロ)とかにしておけば良かったんじゃないんですか?」
と。
「そんな安易な」
 またもや真面目なガトーがコウを叱ったが、コウの言葉でガトーもクワトロ(シャアの偽名)を疑問に思ったらしい。
「確かに4(クワトロ)とは大佐らしくない名前だと思いますが…」
 今更ながら、シャアがこの偽名を選んだ理由に興味を覚えたようだ。
 理由を聞きたがる二人の言葉を耳にしてアムロは困った様子でシャアを見たが、当のシャアは特に迷う様子もなく口を開いた。
「クワトロを選んだのは単純な理由だ。それが私の4つ目の名前になるからな」
 ガトーは「そんな安易な」とは言わなかった。
「4つ目の名前っ!? シャアさんって今までそんなに何度も偽名を名乗ってきたんですか?」
 これまで偽名など一度も名乗ったことがないコウが驚きの表情で口にしたのとほぼ同じ台詞を心の中で叫んでいたからである。ただ、コウよりも人生経験豊富かつ思慮深いガトーは、この話題をこれ以上突っ込んで良い物かどうか迷ったのだ。チラリと視線を向ければ、アムロも同じように思っているらしい表情をしている。
 そんな二人の憂慮を余所に、
「驚かせて悪いが君がたった今口にした『シャア』という名前も偽名の一つだぞ」
シャアは更なる爆弾発言をした。
 今度はアムロとガトーの表情がきっちりと二つに分かれる。
『あーあ、言っちゃった』
 とでも言いたげに肩を竦めたアムロに対して、ガトーは驚愕のあまり言葉も出ない様子だ。
「えーーーっ! 嘘でしょう? それなら僕はこれからシャアさんのことを何て呼べばいいんですか!?」
 微妙に論点のずれているコウの台詞に
「問題はそこではないだろう!」
と言葉が出たのは。たっぷり三十秒近くも絶句してからである。
「いや、今まで通りシャアと呼んでくれて構わないが」
 コウの反応が面白かったのか、クスクスと笑いながらシャアはアムロに向けて問い掛けた。
「君はどこまで知っている?」
「貴方の本当の名前はセイラさんから聞いた。セイラさんの名前(マス)のことを考慮すれば『シャア』が3つ目の名前だってことは想像出来る」
 だからエゥーゴに入るためにシャアが用意した偽名が4(クワトロ)だと聞かされた時にも『単純だなあ』と思いこそすれ、特に疑問には思わなかった。それどころか、自分も偽名を考えなければならなくなった時、『自分は2つ目の名前(初めての偽名)だから2(ドゥエ)でいいか』と安易に考えたぐらいなのだ。
「でも、それだけだ。セイラさんは、貴方の過去(プライバシー)に深く食い込むような話しまでした訳じゃないぞ」
 セイラの名誉のためにも断言したアムロに軽く頷いて、
「そうか。ならば、この二人に説明がてら少し昔話に付き合ってもらえるか」
シャアは語り始めた。
「父が暗殺されたあの日……私とアルテイシアは一人の男に助けられて、始めて地球に降りてきた」

No.19 : Posted at 2018年12月27日 03時42分44秒 - Parmalink - (Edit)

▶再録集5

《カテゴリ:再録集@既刊詳細

■収録内容
【手に入れたいもの・番外編1】
【手に入れたいもの・番外編2】
【Jealousy】

『手に入れたいもの(再録集3)』の続編です

■サンプル

 血を分けた後継者は残さない代わりに総帥としての役割はきっちり果たすと誓ってから、シャアは忙しい日々を送っていた。独裁政権という形式は取っていても、自分の一言で全てが動く訳ではない。相次ぐ会議を終えてようやく屋敷に戻ったシャアは、自室の扉を開けた途端、奇妙な違和感を覚えた。

「お疲れ」
 アムロがそう声を掛けて迎え入れてくれたのはいつもの通り。直前まで誰かと通信をしていたのか、通信機を兼ねたコンピュータ末端の画面が明るく、まだ通電していることを示している。
 ここはシャアの私室であると同時にアムロの私室でもあったから、アムロが自由に使えるようにと専用の末端機も備えられていた。アムロが個人的に通信をしている相手が気にならないと言えば嘘になるが、アムロにはアムロの付き合いや人間関係があると自分を納得させ、必要以上に干渉はしないと決めている。何があっても一生側にいると、そう約束してくれたアムロをこれ以上束縛するのは我が儘でしかないと解っていた。
「食事は?」
 そう問われて、シャアは先程感じた違和感を確信に変えた。この時間に戻った自分が食事を済ませてきている事などアムロは分かっている筈だ。だからアムロの問い掛けは会話を繋ぐ為のもの―――つまりアムロが『何か』から話しを逸らしたがっているという事だ。
「済ませた。君は?」
 何から話しを逸らせたがっているのか―――恐らく直前までしていたらしい通信に関係があるのだろうとは想像出来たが、シャアはそれについて追求せずアムロの話題に乗った。
「済ませたよ。と言うか、貴方が居る時はともかく俺一人の時は食事の準備なんて適当で良いって言っておいてくれないか」
 特に引っ張るような話題でもなかったが、アムロはこの機会に普段から思っていた事を提案する。ネオ・ジオンの総帥であるシャアの屋敷は、屋敷の管理や主人の身の回りの世話をする為にそれなりの数の人間が従事している。当然ながらその従業員達による『身の回りの世話』は屋敷の主人の同居人であるアムロにも及んでおり、その手厚い世話振りから逃げ出したくなる事があるのだ。所謂『使用人』に身の回りの世話を焼かれるのはシャイアン時代に慣れているが、あの頃の使用人は軍が差し向けてきたスパイと割り切る事が出来た。ところが今はシャアに対するのと同じ恭(うやうや)しさで自分に接してくる彼らの態度が、アムロにとっては居たたまれなかったりする。
「適当で良いと言っても、彼らの控え室で一緒に食事をするという訳にはいかないだろう」
「別にそれで充分だよ」
 むしろアムロとしては自分一人に対してシェフがやけに豪華な食事を作り、複数の人間が給仕をする方が奇妙だし無駄に思えた。
「君の言い分は分からなくもないが、世の中には形式や建前が必要な事もあるからな。彼らも仕事なのだ。付き合ってやってくれ」
「形式や建前ね……」
 シャアの立場は分かっているから、そう言われてしまうと諦めるしかない。さりげなく末端機の電源をオフにして立ち上がったアムロは、着替えるために上着を脱いでいるシャアを眺めながら雑談を続けようとしたが、シャアは脱いだ上着をソファの背に放り出すと、雑談を強制終了させた。

「……………貴方ね。帰ってきた早々これはないんじゃないかっ!?」
 強制的に口を塞がれる形になったアムロが、解放された早々抗議をする。
「食事はもう済ませたのだろう?」
「そういう問題じゃなくて……もう少し他にする事があるだろうが」
「例えば?」
「ティータイムとか……」
「コーヒーなら食事の時に飲んだ。君もそうだろう?」
 確かに、ここのシェフや給仕は食後のお茶からデザートまで徹底していた。
「なら、飲みながら少し話そう」
 コーヒーやお茶ではなくアルコールを片手に語り合うのも悪くないと、アムロはそう提案したが、
「話しなら、先程まで誰かと通信していたのではないのか?」
シャアの切り返しがマズイ方向に向かったため、提案を自ら却下せざるを得なくなる。
「分かったよ。なら、せめてシャワーを浴びてからにしよう」
 別にアムロだってシャアとのセックスは嫌いではない。想う相手に求められるのは嬉しいという気持ちもあった。ただ、相手が同性で自分が『抱かれる側』であることに多少照れがあるだけで―――
「では一緒に済ませてしまうか」
「却下だ」
 以前、その提案に乗って酷い目に遭った事がある。明るいライトの元で見る均整の取れたシャアの裸体に見とれて、相手も同じ条件でこちらの身体を見ているのだという当たり前の事をうっかり失念していた。照れる暇もなく気がついた時にはシャアの腕に抱き込まれ、『さすがに3倍速と言われただけある』などとつまらない事を感心している隙に相手はすっかり臨戦態勢で。抵抗も抗議も出来ないままコトに及ばれてしまったアムロは、立ったままという体勢とシャワーの湯気に体力を奪われて大いに後悔したのだ。

「一緒が駄目ならシャワーは後で良い」
「先に浴びた方がスッキリするじゃないかっ!」
「別々にシャワーを浴びるのは時間が掛かる」
 二人は暫くの間お互いの主張を申し立てたが、意見の一致を見るのは難しいと判断したシャアは行動に出る事にした。アムロの腕を取って抱き寄せると、明確な意志を持ってシャツの中に指を忍び込ませる。
「こ―――こらっ、まだ話しは終わっていないぞ」
「シャワーも話しも後で良い」
 シャアの腕から逃げ出そうとするアムロと、そのアムロの陥落を目論むシャアの攻防は、腕力と経験に勝るシャアに軍配が上がった。
「―――ン……っ…」
 身体のラインをなぞっていた指がシャツをたくし上げると、現れた胸には既に勃ち上がった突起が存在を主張している。口に含んで舌で転がせば、腕の中の身体がビクリと震えた。本能的に逃げを打つ身体を更に強く抱き込んで、軽く歯を立てる。
「や……ァ―――」
 敏感になっている部分に歯を立てられて、アムロは思わずシャアにしがみついた。こうなってしまうと、もう途中で止められない事は二人とも解っている。
「どうする? 先にシャワーを浴びるか?」
 意地悪く問い掛けるシャアの髪を、アムロは思いきり引っ張ってやった。
「―――っ……少し力を入れすぎではないか?」
 抜けたらどうする、と苦情を言うシャアに、
「ハゲたら遠慮無く捨ててやるよ」
少しばかり溜飲を下げたアムロがクスリと笑う。本気でシャアの機嫌を損ねると後でそれが自分にはね返ってくる事は分かっているので、その辺りのさじ加減は絶妙に。
 どこか挑発的な雰囲気と媚びの入り混じった笑顔に誘われて、シャアはアムロのシャツを脱がせながら近くのソファに倒れ込んだ。アムロももう抵抗することはなく、むしろ積極的にシャアのシャツのボタンを外す。現れた肌に唇を寄せ少し強めに吸い上げると、白い肌に鮮やかな痕がついた。
「貴方、色が白いから目立つな」
 嬉しそうに囁いたアムロは更にマークを付けるべく唇を寄せたが、相手からの攻撃を一方的に受けてばかりいるシャアではない。
「ア―――っ……おいっ、見える所には止せっていつも言ってるだろう」
 相手が抗議をする前に、項の際どい所に素早く反撃の印を付けた。暫くじゃれ合うかのようにお互いの肌にキスを振らせていた二人だが、やがてそれにも飽きたのかシャアの指がアムロの下半身に伸びる。アムロの方もシャアの身体に腕を回し、二人の唇が再び重なって甘い空気が辺りの雰囲気を変えたその時―――アムロの目が驚きに見開かれ、シャアの身体は無様にもソファから転がり落ちた。もうすっかり『その気』だと油断していたアムロによって蹴り落とされたのである。そのアムロの視線の先には、この屋敷の執事を務めている男がグラスの載ったお盆を手に表情も姿勢も乱すことなく立っていた。
「ブランデーをお持ちしたのですが」
 感情を込めない冷静な声で言われて、アムロが思い出す。
「え―――? ああ……そう言えばお願いしてましたね」
 この情況を取り繕う余裕もなかった。
「申し訳ありません。ノック致しましたら扉が勝手に開いてしまいましたので」
 丁寧に頭を下げた彼は、テーブルに盆を置いて何事もなかったかのように立ち去る。ニュータイプと言われる二人が見ても最後まで感情の乱れが感じられない彼の言動は執事の鏡とも言えるほど見事なものであったが―――
「何故ブランデーなど頼んでいたのだ?」
 これからという所で邪魔をされる形になった(しかも蹴り飛ばされてソファから転げ落ちた)シャアが不機嫌な声で問い掛けた。
「貴方が帰ってくる前に頼んでいたんだから仕方がないだろう! そっちこそ、何でドアをちゃんと閉じておかなかったんだっ!?」
 妙な場面を目撃されて羞恥のあまり真っ赤になったアムロも黙ってはいない。
「故意ではない。閉めたと思っていたが閉まっていなかったのだ」
「ちゃんと確かめろよっ! お陰で恥をかいたじゃないか」
「今更だろう。屋敷の者達は皆、承知の事だ」
「そういう問題じゃないっ!」
 明日の朝、彼にあったらどんな顔をすれば良いのか――
「形式や建前なんか必要ないっ! やはり自分の事は自分でするからと屋敷の人達に言ってくれ」
「だから、今更だと言っている。それとも何か? まさか君はベッドメイクや掃除、洗濯まで自分でするとでも?」
 少々意地の悪い口調で問いながらシャアは立ち上がり、辺りに散らばっていたシャツを拾い上げた。さすがに続きをする勢いを削がれたのか、アムロの分を手渡し自分もシャツを羽織る。
「やらせてくれると言うのなら喜んでやるぞっ! その分、恥をかく回数も減るからな」
 差し出された服を着込みながらアムロも少しばかり喧嘩腰に答えたが、シャアの次の台詞にボタンを留めていた手を止めた。
「おや、アムロは私の嫁になる気か?」
「…………何でそうなる」
「家事を引き受けたいと言ったではないか」
「必要以上に至れり尽くせりな今の待遇を遠慮したいと言っただけだっ!」
 甲斐甲斐しくシャアの身の回りの世話をしてやろうなどと言うつもりはない。自分はそんな事をするためにここ(ネオ・ジオン)に居るのではないし、シャアも求めていないだろう。だからシャアが自分を揶揄(からか)っているのだと解ってはいるのだが、ついムキになって言い返してしまうのだ。
 とは言え、いつまでもムキになって毒舌合戦をしていても仕方がない。ここはせっかくの機会だ。アムロはボタンを最後まで留めると改めて口を開いた。
「嫁云々はともかく、ベッドルームの掃除ぐらいは自分でやると言ってくれないか? お前の言う事なら彼らも聞いてくれるだろうし。それと―――」
「それと?」
 言葉を切ったアムロにシャアが先を促すと、アムロの視線が泳いだ。よく見れば僅かに顔が赤い。
「シーツの洗濯は自分でするから」
「何故そんな面倒な事を?」
 不思議に思ったシャアはそう問い掛けたものの、次の瞬間には理由を悟って吹き出した。
「君がそんなに繊細だとは知らなかったよ」
 笑いながら苦しい息で台詞を絞り出すシャアをアムロが赤い顔で睨み付ける。
「繊細で悪かったな! 貴方も一度、部屋のシーツを回収しにきた現場に立ち合ってみろ。俺の気持ちが分かるから」
 最近はアムロもパイロットの訓練に付き合ったりモビルスーツの開発工場を訪れたりと外に出ている事も多いが、それでもシャアに比べればシーツ回収シーンに遭遇する確率は高い。情事の跡をそのままにしている訳ではないが、全てを隠しきれる筈もなく居たたまれない思いをする事は避けられなかった。
「そうまで言うなら、シーツは使い捨てにするか?」
 収まりきらない笑いをようやく堪えながら問い掛けるシャアを、
「そんな勿体ないこと出来るか、バカ」
アムロが怒鳴る。
「しかしな。真面目な話し、君にシーツの洗濯をさせる訳にもいかないだろう」
「なら、貴方がすればいい」
 半ばヤケクソ気味で言って、アムロはガックリと肩を落とした。シャアがシーツを干しているシーンを想像してみたのだが、あまりにも似合わない。第一、もし本当にそんなことをすれば、屋敷の者達が全力で止めに来るだろう。ネオ・ジオンの総帥たるシャアがシーツを洗濯しているなどという噂が広まろうものなら、ナナイやホルストだって黙ってはいない―――と思う。
「言っておくが、シーツの洗濯が恥ずかしいから別々に寝ようなどという案は却下だからな」
「………なるほど。そんな事は考えつかなかった。良い案だな、それは」
「だから、その案は却下だと言っている」
 釘を刺したつもりが墓穴を掘る形になり、シャアは慌てて付け加えた。
「分かってる。冗談だよ。いくら何でも、それじゃあ俺がここにいる意味が無いじゃないか」
 言ってからアムロは自分がとんでもない台詞を口にした事に気付く。
「い………言っておくけど、俺は別に貴方とのセックスが目的でここにいる訳じゃないからな」
「勿論、分かっているとも。愛しているよ、アムロ」
 真っ赤な顔で呟くアムロを抱き締め、シャアはクスクスと笑いながら嬉しそうに言った。

No.18 : Posted at 2018年12月27日 03時37分05秒 - Parmalink - (Edit)

▶再録集4

《カテゴリ:再録集@既刊詳細

■収録内容
【戦士たちの休息】全編

Z終了直後〜CCAの時間軸で二人が逢瀬を繰り返すほのぼの話

■サンプル

「やあ、久しぶり。元気そうでなによりだ」
 そこにいるはずのない男が、行方不明の筈の男が、あまりに自然に手を挙げたので、思わず答えてしまった。
「そっちも元気そうだね」
と。


「それで――こんな所で何をしているんだ?」
 アムロの口から当然の質問が口をついて出たのは、無断侵入の男にコーヒーを入れてやってからだった。
「コーヒーを飲んでいるが?」
 お約束のボケに白い目を向けると、相手は軽く肩を竦める。
「……と言うのは冗談で、人の家を訪ねてきたのだから、その家の主に会いに来たに決まっている」
「で、留守だったから勝手に部屋に入ったと?」
 悪びれた様子もなく「その通り」と頷くシャアにアムロは呆れて溜息をついた。
 シャイアンに監禁されていた頃とは違い、ここは軍から押しつけられた住まいではない。当然ながら部屋に数多く仕掛けられた監視カメラや盗聴器のような物はないが、一応有名人の自覚はあるのでセキュリティはそれなりのマンションを選んでいる――つもりだった。
「こうも簡単に無断侵入を許すようじゃ、もっとセキュリティレベルの高い部屋に引っ越す必要があるな」
「その必要はない。このマンションのセキュリティはなかなか優秀だ」
「そのセキュリティを破って侵入した奴が言っても説得力がないと思うけど?」
 自分もコーヒーを口にしながら皮肉ってやったが、その口調に棘はない。アムロが自分を咎めるつもりはないと察したシャアは、小さく笑ってタネを明かした。

 それによると、マンションのエントランスに設置されていたナンバーロックは簡単に解除出来たが、先ほどのシャアの台詞通りこのマンションのセキュリティは優秀で、網膜識別装置でロックされた部屋のドアを開ける事は出来なかった。仕方なくシャアは部屋の玄関先でアムロの帰宅を待つつもりだったのだが、一時間ほど待った頃、制服姿の女性が現れて身分などを問い掛けられたらしい。このマンションには各区画にカメラが設置されていて、その映像はマンションの総合管理室で人間によって監視されているのだ。
 機械と人間―――この二重の管理体勢にシャアは感心したが、咄嗟にシャアはそれを逆用することを思いついた。


「その警備員に、私は君を訪ねてきた友人なのだが運悪く入れ違いになってしまったらしいと話したら、彼女が玄関のロックを解除してくれたのだ」
 確かに緊急事態に備え、総合管理室では各部屋のロックを解除する事が出来る。とは言え―――
「プロの警備員が、そんなに簡単に不審者を信用してロックを解除するとは思えないけど」
 疑り深いアムロの視線に、「不審者とは酷いな」とシャアは見当違いのコメントを返したが、アムロの疑問を誤魔化す意図はなかったらしい。少しばかり得意げな笑顔で言葉を続けた。
「私がどうやって『クワトロ・バジーナ』の身分を手に入れたと思う?」
 つまり、彼は地球連邦軍の軍人としての身分証明書を手に入れる事が出来る程度には、連邦軍のどこか―――恐らくはかなり上層部にコネクションがあるのだ。
「それにしても、同じ連邦軍所属の軍人証を持っているからって、友人なんて台詞を信用するか? 第一、例え本当に友人だったとしても、家主に無断でロックを解除し、警備員の判断で勝手に相手を部屋の中に入れるとは思えない」
 当然のアムロの疑問に、今度は悪戯を見つかった子供のような表情でシャアが笑った。
「ああ、そこはね………現れた警備員が若い女性だったのが幸運と言うしかないな」
「…………それって『色仕掛け』って言わないか?」
「ああ。まあ、そうとも言う」
「そうとしか言わないよ、まったく」
 シャアに……というよりもむしろ、プロのくせに色仕掛けに引っ掛かった警備員の方に呆れたが、中世ヨーロッパの貴族を思わせる美しい金髪に青い瞳、表情さえ取り繕えば上品な紳士で通用する整った顔立ちに加え、演説をすれば民衆を扇動出来るだけの弁舌と人を惹き付けるカリスマ性―――連邦軍の身分証明書を見せられた若い女性警備員が誘導されるまま相手の意に従ってロックを解除してしまった気持ちも解らなくもない。
「結局、どんな優れたマシンも使う人間次第ってことだな」
 これじゃあ『網膜識別装置』なんてご大層なセキュリティも意味がないと皮肉ったアムロに、何故か当のシャアが真剣な表情で頷く。
「その通りだ。一年戦争のガンダムだって、パイロットが君でなければ宝の持ち腐れ。あれ程の活躍は出来なかった筈だ。いや、活躍する前に私が墜としていた」
「………そりゃあ、どうも。ガンダムとパイロットを褒めて頂いて」
 無表情を装いそっぽを向いてアムロは素っ気なく呟いたが、ほんのりと赤く染まる頬をシャアは見逃さなかった。
「照れる事はないだろう? 事実なのだから」
 シャアがクスクスと笑う。
「べ――っ、別に照れてなんかいない」
 自分でも説得力がないと自覚しながら、アムロは嘘を押し通す。そう―――嘘。本当は照れていた。シャアの台詞が嬉しくて……くすぐったかった。一年戦争の時、ある男に言われた言葉は、その後ニュータイプと呼ばれパイロットとしての腕を認められてからも、小さなコンプレックスとして心の端に引っ掛かっていたのだ。
『自分の力で勝ったのではないぞ。モビルスーツの性能のお陰だということを忘れるな!』
 だが、パイロットがアムロだったからこそとシャアは言う。いつだってアムロを一番高く評価しているのは目の前にいるこの男。
「ありがと…」
 アムロは相手には届く筈のない小さな声で呟いた。


「で、結局何をしに来たんだよ?」
 最初の話題が再燃した時、二人は何故かアムロのマンションの部屋で一緒に夕食を取っていた。
「夕食を食べに来た、なんて台詞は聞かないぞ」
 先ほどの会話を思い出し、しっかり先に釘を刺しておく。
「君に会いに来たと言っただろう?」
「だったら、さっさと用件を言え」
 まさか茶飲み話をしにきた訳じゃないだろう?と詰め寄るアムロに、
「それに近いかもしれないな」
とシャアが言う。
「一言、挨拶しておこうと思ってね」
「挨拶?」
 それこそ訝しげにアムロが問い返した。今更挨拶などが必要な関係ではない。
「君には私が生きているという事を知っておいて欲しいから」
 グリプス戦役が終結してから十ヶ月ほどが経った今、表向きは戦場で行方不明になったとされている『クワトロ・バジーナ大尉』は、状況から考えて生死は絶望というのが通説だった。元々シャアはそれを狙ってあのタイミングで姿を隠したのだが、アムロにだけは知っておいて欲しかったのだ。自分が生きているという事を。だが、それを聞いた相手の返事は冷たいとさえ言えるほどそっけない。
「なんだ、そんな事を言いにわざわざ地球へ降りてきたのか?」
「………そんな事?」
 それまで穏やかな表情で微笑んでいたシャアが眉を顰める。誠意を込めた自分の言葉を『そんな事』と片付けられるのは不本意だった。
 一方のアムロは、シャアの不穏な気配に気付いているのかいないのか―――前言を撤回する様子もない。
『私の生死など、君にとってはどうでも良い事だと?』
 シャアがそう問い詰めるより早くアムロが口を開く。
「そんな事、わざわざ良いに来なくても知っていた。貴方が死んだなんて思った事は一度もないよ」
 何を根拠にか、きっぱりと言い切ったアムロの顔にシャアが驚愕の視線を向け………きっかり3秒後にその表情がふわりと緩んだ。
「そうか…知っていた……か」
 過去も現在も、そして恐らくは未来も-―――誰よりも自分を理解してくれるのは、敵でありライバルでもある彼。この先、お互いの道が再び分かれる事があっても、それだけは変わらない。
 それでも―――
「側にいて欲しい…」
 シャアは、その言葉を相手に届く声で伝える事は出来なかった。

No.16 : Posted at 2018年08月19日 22時38分04秒 - Parmalink - (Edit)

▶再録集3

《カテゴリ:再録集@既刊詳細

■収録内容
【手に入れたいもの】
【手に入れたいもの2】

アムロinネオジオンの話

■サンプル

「またか…」
 もうウンザリだと言わんばかりの勢いでブライトが溜息をつく。調査に来ただけの自分達が、何故、現地住民と戦闘しなければならないのか、と。外殻新興部隊ロンド・ベル隊の旗艦ラー・カイラム艦長ブライト=ノアは実際ウンザリしていた。

 宇宙世紀0090の3月に設立されたロンド・ベル隊は、表向き反地球連邦組織のテロに対する監視と鎮圧の為に設立されたのだが、暗黙の了解としてもう一つの任務が与えられていた。
『グリプス戦役の際に行方不明になったとされるクワトロ=バジーナことシャア=アズナブルの所在を突き止める事』
 0089辺りからスペースノイドの間では地球からの独立の気運が高まっていた。連邦軍が経済制裁などを行ってコロニーを締め付ける程、それに比例するかのように各コロニーでは独立運動が活発化し、エグムやNSPといった過激な反地球連邦組織がテロを繰り返すようになっていた。そんな彼らにとって40年以上も前にスペースノイドの独立を提唱し、それを実行しようとしたジオン=ダイクンの忘れ形見であるシャアは、格好の旗印でありカリスマ的存在だったのだ。
 ロンド・ベル隊設立当初はシャアの生存自体に半信半疑だった連邦軍上層部も、捉えた捕虜が口々にシャアの生存を主張すると、さすがにその存在を煙たく思うようになったのだろう。0092に入ると、各コロニーを徹底的に調査してシャアの行方を突き止めろとまで命令してきた。

「仕方ないよ。コロニーに住むスペースノイドの多くはシャアの味方さ。彼らから見れば、俺達は地球から宇宙全体を支配しているつもりでいる一部のエリートどもの手先も同様なんだろう」
「奴らの手先と思われるのはさすがに不本意だな……」
 辛辣なアムロの意見にブライトが苦笑する。
「連邦軍の軍人としては、あまり褒められる台詞じゃないね」
 二人は地球連邦軍の大尉と大佐という地位にあったが、連邦政府や軍上層部を信用していないという点では完全に意見が一致していた。
「一年戦争の頃、貴重な軍事機密を持って脱走までやらかした不良軍人に言われたくない」
 そんな軽口が許される間柄でもある。
「まあ、そのお前がいなけりゃ、あの頃も今も、まともな戦闘なんぞ出来ないのだがね」
 コロニーの調査は困難を極めていた。連邦軍が調査に行くと、コロニーのスペースノイド達はまるで敵が来たかのように警戒し、調査に協力するどころか、部隊は反地球連邦組織から攻撃を受ける事もしばしばだ。ほとんど実戦経験のないロンド・ベル隊で、アムロの存在は貴重だった。
「ロンド・ベル隊メインスタッフの候補者リストの中にお前の名前を見つけた時、俺は嬉しかったのと同時に少し意外だった」
「政府や軍上層部が、よく俺を宇宙で野放しにする気になったって?」
 アムロの口調に皮肉が混ざるのは致し方ない。一年戦争終結後、随分長い間アムロは『危険人物』として軍の監視下に置かれていたのだ。
「それもあるが―――お前がロンド・ベル隊への入隊を引き受けた事の方が意外だった」
「命令には逆らえないよ」
 アムロは素っ気ない口調で答えたが、それが嘘である事はどちらもが知っていた。
「その気になれば軍を抜ける事も出来ただろう? お前は軍に恩も義理もないんだから……」
 ブライトの指摘はもっともで、これ以上の言い訳は無意味に思えた。歴戦の名艦長は、相手の本心を聞き出す才能もあるらしい。まあ、これは単にアムロがそれだけブライトに心を許しているからに他ならないのかもしれないが。
「ブライトの言う通りだ。俺がロンド・ベル隊への入隊を受諾したのは、スペースノイドの独立運動の鎮圧に荷担するためなんかじゃない-―――」
 言葉を探すように少し間を開け、
「一つ、話しを聞いてもらってもいいかな」
 そんな前置きと共に、アムロはロンド・ベル隊が設立されて丁度一年ほどが経った頃の出来事を語り出した。



 目の前に立っている人物が、自分に会う為にやって来たのだとアムロは疑いもしなかった。自意識過剰だったわけではない。相手が『偶然の再会』に驚いた様子でもなく自分に視線を投げてきたからだ。
「こんな所に何をしに来た?」
「君に会いに」
 一応の問い掛けに、返ってきたのは予想通りの答え。
「アンタは自分が連邦軍の中で『指名手配』に近い扱いだって事、分かってないようだな? シャア」
 血眼になって探していた筈の相手が突然目の前に現れた事に、腹が立つよりも呆れる。
「自分の立場はわきまえているさ。だから、ちゃんと変装をしているだろう?」
「それの、どこが……」
 連邦軍がシャアの資料として配付しているデータは、シャアがクワトロ大尉を名乗っていた頃のものだ。それを考えれば確かにサングラスなど掛けていた方が身元はバレやすいのかもしれないが、目立つ金髪に鮮やかなブルーの瞳を晒していては、一般人を装った地味な服装や伊達眼鏡など意味がないように思われた。
「第一、その服貴方には似合わないよ」
 ありふれたチェックのシャツにGパン―――余程体型に問題がない限り着こなすのが難しい格好ではないのだが、シャアが着るとどうも似合わない。体型的には全く問題などないので、やはり『カジュアルなシャア』というイメージが合わないのだろう。
「似合わない? そうか? 軍人や政治家などに見えないよう苦心したのだが…」
「………まあ、確かに政治家には見えないけどね」
 数年ぶりの再会がごく普通の街中で、シャアと、これまたごく普通の会話を交わしている自分を可笑しく思った。だが、不思議と違和感はない。もし―――もしも、シャアと自分が敵としてではなく出会っていたら、意外と良い友人になれたのかもしれない……そんな風に思えるほど、シャアとの会話は本当に普通だったのだ。
「少し時間を取れないか? 折り入って話しがある」
 それまで浮かべていた微笑を封じ込め、真剣な口調で申し入れてきたシャアにアムロも表情を変えた。『折り入って』の内容が茶飲み話とは思えない。
「時間はあるが、忘れてもらっては困る。俺は今でも連邦の軍人だ。話しの内容によっては上に報告する事になるぞ?」
「報告するかどうかの判断は君に任せるよ」
 今すぐ通報するとは言わないアムロにもう一度笑顔を見せ、シャアは先に歩き出した。アムロも後に続く。

「話しをするのに、こんな場所でないといけないのか?」
 案内された場所に眉を顰めアムロは言った。そこは所謂『ラブホテル』。今時、男同士で入るところを見られてもあからさまに注目されるワケではないが、居心地が良い場所とは言い難い。
「こういう場所は余計な人間にも会わずにすむし、意外と内緒話をするのに向いているのだよ。他意はない」
 派手なダブルベッドに腰掛けながらシャアが答える。
「もっとも、君の返答次第では本来の目的に使用しても良いが?」
「何だって…?」
 付け加えられたシャアの台詞に、アムロは眉間の皺を濃くした。
「折り入って話しがあると言わなかったか?」
「では、本題に入ろう。何年も前に断った話しを蒸し返すなと言われそうだが……」
 シャアの前置きで、アムロは『話し』の内容に見当をつける。そして、シャアの切り出した話しはアムロの予想通りだった。
 同志になれと―――
 一緒に来いと―――
「何故、今更そんな事を? 一緒に戦った仲間を見限ったのは貴方の方だ」
 地球で『クワトロ大尉』の行方不明の報を聞いた時、一般的に考えれば生存は絶望的な状況だったにも関わらず、アムロはシャアが死んだとは思わなかった。数年後、彼が反地球連邦派のカリスマ的存在として生存を噂された時は、驚くよりも「やはり…」という思いの方が強かった。地球でクワトロ大尉のフリをしていた時のシャアは随分無理をしているよう見えたので、いつかはそんな日が来るだろうと思っていたのかもしれない。
「あの時一緒に戦っていた仲間を見限ったつもりはない。どうやっても変わらない―――変わる気のない地球の連中に嫌気がさしたのさ。内部からの改革は無理だと分かった。だからクワトロ大尉でいることを辞めたのだ」
 シャアの言い分も気持ちも理解出来た。賛同出来る部分があるのも事実だが、アムロはシャアに差し伸べられた手を取る訳にはいかなかった。
「内部からの改革の方が時間がかかる事は承知している。だからと言って諦める訳にはいかないし、テロで体勢が変えられるとは思わない」
 各地で頻繁に行われているテロや、そういう者達に祭り上げられているシャアに嫌みを込めて言う。
「勿論だ。いつまでもテロのような活動をしていては何も変わらない。だから、政府や連邦軍に対抗出来るだけの組織が必要なのだ」
 その為に力を貸して欲しいと―――
 そう言われて一瞬決意がぐらつきそうになる。もし次の一言がなければ、シャアの誘惑に肯いてしまったかもしれない。
「アムロがいなければ、連邦軍など敵ではない」
 それはシャアの本音ではあったが、本心ではなかった。この時シャアがもう少し素直であれば、或いは二人は戦う事などなかったのだろう。
「戦い甲斐のない敵では、貴方もつまらないだろう?」
「―――それが返答か?」
 無言の返答に、シャアは諦めきれない様子で言葉を継いだ。
「敵に回ると分かっているのなら、このまま君を拉致しても良いのだぞ?」
「出来もしないことを…」
 もうこれ以上話す事はないとばかりに話しを切り上げようとしたアムロの腕を捕り、座っていたベッドから立ち上がるとシャアは間近からアムロの瞳を覗き込む。
「もう一度言う。腐敗しきった地球の連中を内部から変えるのは無理だ」
「やってみなけりゃ分からない。俺は貴方ほど諦めが良くないんでね」
 握られた腕を振り解けない―――その力の差が悔しくて皮肉めいた口調で反論し、アムロはシャアを睨み付けた。
「離せ」
 こんなところでムキなっても仕方がないと静かな声で言ったが、
「イエスと言うまで離さないと言ったら?」
「つまらない事を言ってないで離―――――っ!」
 人を馬鹿にしたような―――あくまでもアムロの主観であるが―――シャアの言い様に思わず声を荒げ、しかしその台詞は途中で遮られた。
「何を―――ン……っ」
 無理矢理塞がれた唇を一度は引き離したが、抗議を口にする前に再び唇を奪われる。今度は引き離すどころか藻掻けば藻掻くほど深く唇を合わされ、口腔内を貪られた。舌先で歯列をなぞられビクリと身体が震える。女性とキスを交わした事は何度もあったが、こんな風に貪られるキスは初めてで、アムロは酸欠と驚愕と―――そして、認めたくはなかったがシャアによって与えられる快感の為に膝から力が抜けていくのが分かった。
 シャアの支えがなければその場に崩れ落ちそうな状態になって、ようやく解放される。
「何のつもりだ……?」
 荒くなる息を整えながら問い掛ける声は意外なほど冷静で、事実、何故かアムロはシャアの行為に対して腹を立ててはいなかった。シャアが戯れ言でやったとは思えなかったから…かもしれない。ただし、シャアが『それ以上』を求めてくれば話しは別だ。
「ララァの代わりを俺に求める気なら、無駄な事だ」
「無駄……か」
 真っ直ぐに見詰めてくるアムロの視線を受け止め、シャアは捉えていた腕を離した。
「ならば戦って決着をつけるしかないな」
「むしろ、それが貴方の望みなんじゃないのか?」
「―――その通りだ」
 その言葉が合図であったかのようにベッドから立ち上がりドアへと向かう。
「地球に大切な人がいるなら今のうちに宇宙へ上げておく事だ、アムロ」
 最後にそんな言葉を残し、シャアは部屋を立ち去った。



「妙な話を聞かせてしまってすまない」
 アムロに話の終わりを告げられ、ブライトはハッとしたように顔を上げた。
「いや、俺は構わないが…良かったのか? かなり、お前とシャアのプライベートに立ち入った内容だったが……」
 どうコメントして良いのやら分からないといった様子で言葉を濁すブライトにアムロがクスリと笑う。
「いいんだよ。俺の方が、誰かに聞いて置いて欲しかったんだ。シャアと決着をつける前に…」
「そういう言い方はよせ。何だか遺言のように聞こえるぞ?」
 冗談のつもりで言ったブライトだが、アムロの表情に息を呑んだ。
「シャアとの決着を求めていたのは俺も同じだった。シャアを探すのに、奴と決着をつけるのにはロンド・ベル隊に入るのが一番近道だと思ったから―――」
 ロンド・ベル隊への入隊を決めたのだとアムロは言った。
「シャアが何をやらかす気か今は未だ分からないが、奴を止めなければ……」
 強い決意を秘めたアムロの瞳が益々ブライトの不安を煽る。
「……アムロ。お前、シャアと心中するつもりじゃないだろうな」
「まさか。ただ、戦場では何が起こるか分からないからな。いつ自分の言葉が遺言になるかは分からないだろう?」
 シャアがどんな作戦で連邦軍に臨んでくるかは分からないが、いざモビルスーツ戦ということになれば、アムロがMS部隊のリーダーとして最前線で戦う事になる。最終的にシャア本人が出てくれば、今の連邦軍でまともに相手が出来るのはアムロしかいないのだ。当然ながらアムロにかかる負担は大きく、いくらアムロが優秀なパイロットであるとはいえ命を落とす危険がないとは断言出来ない。
 しかし危険度で言えばアムロもブライトもそう変わるものではなかった。
「それを言うなら、俺の方が先に死ぬ可能性だってある。一緒に戦場に出る相手に遺言を残しても仕方ないんじゃないか?」
 ブライトの言い分にアムロが大きく首を横に振る。
「それは、ないな」
「何故そう言い切れるんだ?」
「俺はブライト艦長の腕を良く知ってるからね。それに…」
 アムロはそこで一旦言葉を切り、冗談とも本気ともつかない視線をブライトに向けた。
「俺が戦場にいるのに、旗艦を墜とさせたりはしない」
 だから自分より先にブライトが死ぬ筈はないと、それがアムロの主張。聞きようによっては『お前は俺が守る』と言われているようなものだ。長い付き合いとは言え、ブライトもさすがにこれを冗談で誤魔化してしまうのは申し訳ない気になる。
「俺もアムロ=レイがどれ程優秀なパイロットかは誰よりも知っている。だから、お前が居てくれる限り墜とされる気はしないよ」
 真剣な表情で答えて―――しかし、どうしても伝えたい事があった。
「だが、お前に命をかけて守って欲しいとは思わない」
 本来ならパイロットが命をかけて旗艦を守るのは当然の事。しかし、敢えてブライトはアムロにそう告げた。アムロが個人的な友情を込めて『旗艦は守ってみせる』と言った事も承知の上で。
「お前は昔から、我が儘なくせにいざとなると自分の命よりも他人を優先する癖があるぞ?」
 一年戦争当時に戻ったような口調でブライトがアムロに説教する。
「もうそろそろ、自分の事だけを考えても許されるさ」
 長い間、アムロが軍によって地球の重力に縛り付けられていた事をブライトはよく知っていた。だから軍や地球にこれ以上縛られる必要はないのだと、他の生き方を見つける事が出来るのなら、そんなモノはいつでも見捨てて自分の為に生きろと、ブライトはアムロに言いたかった。
「我が儘だけ余計だよ」
 拗ねたフリでそう言って、アムロは照れくさそうに微笑んだ。「ありがとう」と小さな声で伝える。
 ブライトも急に照れくさくなって視線を逸らし、続きは冗談に紛れさせた。
「だいたい、お前が命をかけて旗艦を守っているなどとシャアに知られたら、シャアは真っ先に俺を狙いに来るぞ?」
 赤い彗星の標的にされるのはゴメンだと文句を言うブライトに、
「それは大変だな。せいぜい厚く弾幕を張っておいてくれ」
アムロもそんな冗談を返す。二人は声を揃えて笑った。

 それから約半年後の0093.02.27。ネオ・ジオンの総帥シャア=アズナブルは連邦軍に宣戦布告をした。

No.15 : Posted at 2018年08月19日 17時49分43秒 - Parmalink - (Edit)