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▶0087 vol.4

《カテゴリ:0083シリーズ@既刊詳細

■宇宙世紀0087舞台のシャア×アムロ本です。
ベースはZガンダムですが2007年発行(2011年8月『再録集1』に収録)の『0083』2011年8月発行の『0084−0087』の続編となっております。シャアとアムロの関係がZガンダムとは違う設定になっておりますので、前作を読んで頂いた方がお楽しみ頂けると思います。

■『0083』の続編ということで引き続きコウやガトーは登場しますが、話の主人公はアムロとシャアです。『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』という作品やコウやガトーに思い入れの深い方に読んで頂くには不向きな内容となっております。

■サンプル

アーガマでブライトと思わぬ再会を果たしたアムロだが、そのブライトとアムロが落ち着いて話しを出来る機会はすぐには訪れなかった。テンプテーションの艦長としての任務が残っている上に、今後の身の振り方についてアーガマのメインクルーやエゥーゴ上層部と何かと話しをしなければならないブライトは多忙であり、アムロはアムロで正体がバレてしまったことについて各方面にフォローをしなければならなくなったからだ。最優先でフォローしなければならない相手と話すことが出来たのは、テンプテーションの救出から半日近くが経ってからだった。カミーユと話をするタイミングを窺いつつデッキでテンプテーションの解体や出撃したモビルスーツのメンテナンスをしていたアムロに、カミーユの方から近づいて来たのである。
「今いいですか?」
カミーユが声を掛けてきた時、アムロの手には工具が握られていたが「こっちはもういいから、行ってやれよ」と言ってくれたアストナージに後を任せてデッキを後にした。どこで話しをしようかと問うアムロに、最初からそのつもりだったのか迷うことなく
「僕の部屋で」
とカミーユが応じる。
「メカニックの人達は態度変えてないんですね」
部屋に着くまで沈黙を覚悟していた(むしろ部屋についてからカミーユにどう話しを切り出そうかと思案していた)アムロは、デッキを出てすぐ口を開いたカミーユに驚き、同時に安堵した。カミーユは思ったよりずっと落ち着いているようだ。
「最初は妙な敬語を使われたり余所余所しい態度を取られたりしたけど、止めてくれと頼み込んだんだ」
一年戦争の英雄であり大尉という階級にあるアムロに対して、デッキクルーも今後の接し方を迷っていたが、これまで通り接して欲しいとのアムロの言葉を案外すんなりと受け入れてくれた。
「英雄だ大尉だって言っても、そんな貫禄がないからね僕には」
おどけて付け加えれば、
「確かに。僕もすっかり騙されました」
カミーユが苦笑を返す。『騙された』という台詞にアムロはドキリとしたが、カミーユの声音は案外軟らかかった。だが、それっきり黙りこんでしまったカミーユから感情を窺うことは出来ない。シャアが危惧しているほど、アムロとカミーユの間にニュータイプ同士の共鳴や共感が成り立つ訳ではないのだ。そもそも、ああいうことは『ここぞ』という場面で発揮されるものであって、ニュータイプ同士なら常に言葉無しでコミュニケーションが成り立つことなど有り得ず、今も口調や表情、態度から思ったよりずっと落ち着いていると感じ取るのがせいぜいである。
「今からする僕の話しをアムロ・レイではなく、仲良くしてくれた友人のディーとして聞いて欲しいんです」
部屋に入って、最初に言葉を発したのもカミーユの方だった。その方が本音をぶつけてくれるだろう。アムロにとってもカミーユの提案は願ったり叶ったりだ。
アムロの気持ちを汲み取ったのか、カミーユは返事を待つことなく話し始めた。
「グリーンオアシスにいた頃、僕はアムロ・レイやブライト艦長に憧れてた」
一年戦争の逸話の数々に心を躍らせ、ホワイト・ベースのクルーに憧れ、アングラで発行された本や雑誌まで探して読み漁った。あの日も、ブライト艦長のテンプテーションが入港してくると聞いて宇宙港まで行ったところを、エゥーゴのMKU強奪作戦に巻き込まれたのだ。
「でもアーガマに乗ってからは、何かと言えばアムロ・レイを引き合いに出されて比べられて、アムロ・レイのことなんか大嫌いになったんだ」
みんながアムロ・レイと同じ才能があるのだからパイロットになってガンダムに乗るべきだ、と口を揃えて言う。言われるたびに反発して、どんどんアムロ・レイが嫌いになっていって、逆に、嫌なら乗る必要は無いと言ってくれたディーに対する信頼と友愛が深まっていった。だから、そのディーが実はアムロ・レイだったと知らされたとき、騙されていたことが悔しくて悲しくて―――
「でも、どこかで納得もしてた」
きっと心のどこかで、ディーは他の人とどこか違うと感じていたのだろう。
「ディーが僕に、ガンダムの乗らなくても良いって言って
くれたのは、僕にはアムロ・レイのようにガンダムを乗りこなすのは無理だと思ったから?」
「それは違う」
カミーユの口から『大嫌いになった』と言われたときにも表情すら変えることなく話しの続きを促したアムロが、初めて口を挟んだ。
「むしろ逆だよ。カミーユなら僕以上にガンダムを乗りこなしてしまうんじゃないかと思ったから、自分の意思でないなら乗らない方が良いと思った。カミーユには僕のような思いをして欲しくなかったんだ」
アムロの言う『僕のように』の真意は、今のカミーユには理解出来なかった。それでも、アムロがカミーユのことを思って言ってくれていたのだということだけは解かった。
「さっきも言った通り、いろんな本や雑誌であなたのことを読みましたけど、アムロ・レイがこんなにお人好しの世話焼きだなんて、どこにも書いてありませんでしたよ」
自分の中で吹っ切れたのか、表情を軟らかくしたカミーユに、
「それはそうだろう。お人好しの世話焼きなんて初めて言われた」
苦笑を浮かべたアムロが肩を竦めて応じる。
「そうですか? 僕を特別扱いしてくれてるって自惚れたいところですが、アムロさんの『特別』は僕じゃないですよね」
ディーがアムロ・レイだと知った時、カミーユはアーガマで囁かれているあの噂は真実なのだと確信した。そして、その噂の主がアムロにとって特別なのは当然だとも思った。
カミーユの指摘に一瞬ドキリとしたアムロはうろたえたかのように視線を扉の方へと外したが、カミーユが言う
『特別』にそういう意味は含まれていないようだ。
「……確かに、あの人は特別だね」
そう認めながらも、どう特別なのか言及されることは避けたいアムロは、カミーユに視線を戻しながら速やかに話題を軌道修正する。
「四年前にある人から、自分にガンダムを乗りこなすのは無理なんじゃないか、自分は乗らない方が良いんじゃないかと相談されたことがある」
それはカミーユの気を惹くに充分の話題だった。
「その人も僕みたいな子供だったんですか? やっぱりその時も、嫌なら乗らない方がいいって言ったんですか?」
矢継ぎ早に問い掛ける。
「いや。その時は、君がガンダムに乗るべきだと言ったよ」
「そうなんですか?」
「彼はカミーユのような未成年の民間人じゃなく訓練を
受けた軍人だったし、なにより彼の本心はガンダムに乗りたがっていたからね」
「ああ、それは……当然ですよね。ガンダムはパイロットなら誰だって憧れる機体だし」
納得した様子のカミーユに、アムロは続く言葉を飲み込んだ。倒したい相手がいる―――コウがそう言ったからこそ、あの時アムロはコウの背中を押したのだが、今のカミーユにそれを言っても仕方がない。
「カミーユも、もうガンダムを……アーガマを降りる気はなさそうだね」
人が戦う理由はそれぞれで、カミーユが戦うことを決めた理由もカミーユだけのものだ。
「戦争は好きじゃないですけど、アーガマの人達には良くしてもらったし、ティターンズの遣り方を知った今、奴らを許せないって」
カミーユが気持ちを決めたのなら、これ以上彼を止めることは出来ないし、止める気も無かった。
「なら最後にもう一度だけ、僕の言うことをアムロ・レイの言葉じゃなく、カミーユの友達のディーの言葉として聞いてくれるか?」
神妙な表情で頷くカミーユにアムロが言う。
「この先、戦いを続けていけば辛いことが沢山あると思う。
その時は、一人で思い悩まないで相談して欲しい。アーガマのクルーの誰かとか、友達のディーとか……アムロ・レイにでも」

No.10 : Posted at 2018年08月19日 17時17分22秒 - Parmalink - (Edit)