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《カテゴリ:イベント参加&新刊》
2019年12月28日(土)
東京ビッグサイト 西1ホール ゆ-04a
サークル名【Come Come Come】
新刊情報
■【幼馴染み・After】
A5 32P (シャア×アムロ小説)本
2019年12月28日発行 300円
■【再録集6】
A5 188P (シャア×アムロ小説)本
2019年12月28日発行 1800円
※書き下ろし『幼馴染み・After』収録
▶再録集6
《カテゴリ:再録集@既刊詳細》
■収録内容
【幼馴染み・1st】
【幼馴染み・Z】
【幼馴染み・CCA】
【幼馴染み・After】
シャア(とセイラ)とアムロが幼馴染みだったら…という設定のシャアム本。
■サンプル
父親は軍の技術士官、母親は所謂専業主婦。増え過ぎた人類の大半が宇宙コロニーでの生活を余儀なくされる中、地球に家を持ち収入も安定している一家は、エリートとまでは言わなくても充分に恵まれた家族であった。
「弟か妹が居れば良かったのにね」
一人遊びばかりしている息子に向かって時折母親がそんな事を言ったが、それは一人っ子である息子を不憫に思ったと言うよりも、仕事が忙しく家にいる時間が少ない父親に対する不満を皮肉った言葉だったらしい。一見幸せに見える家庭も、既に感情はすれ違っていたのか。後年、ニュータイプのプロトタイプと呼ばれるようになるこの家の一人息子が、他人の感情や気配に賢くなった要素はこの頃に培われたのかもしれない。
そんな一家の住居は中流家庭の住宅が並ぶ区画の一角に位置していたが、隣の区画にある高級住宅街に新しい住人が越してくるという噂が広がったのは、一人息子である少年が四歳になる直前のことだった。そして一週間もしないうちに噂通りその住人はやってきた。姿を見かけた近所の者達に『まるで絵本の中から出てきたかのような』とか『夢のように美しい』とか『天使のよう』と形容される兄妹と、その二人の父親には見えない壮年の男性という取り合わせは様々な憶測を呼び、噂は更に広がったが、最高潮に盛り上がった噂話は驚くほど早く収束した。噂の元である彼らが近所の住民と一切関わりを持とうとしなかったからだ。
そんな訳で、近所の住民と一切関わりを持とうとしない素性不明の『ご近所さん』と、仕事で家を空けがちな父親、専業主婦である母親、一人遊びが好きで引き籠もりがちの一人息子が接触する機会など永遠に来ないかのように思われた―――のだが。
出会いは突然訪れた。それが『運命』であったのか、ただの『偶然』であったのかは分からないが、その出会いはごく平凡で劇的と言えるようなものではなかった。
◆
未来のニュータイプであるその少年は、その日、道に迷っていた。母親に連れられ買い物に出ていた少年は、母が出かけた先の店で偶然出会った知り合いと少しばかり話し込んでいる間に退屈になり、好奇心の赴くまま目に付いた物を追いかけてしまったのだ。最初は目の前を飛んでいた小さな虫、次に足下に転がってきたボール、そしてそのボールで遊んでいた見ず知らずの少年達、最後に散歩をしていた犬の後を追っているうちに、気が付けばそこは見知らぬ河原。子供が迷子になる典型的なパターンであり、たいして珍しいことでもない。
珍しいことではないが、四歳になりたての少年にとっては大事件である。キョロキョロと辺りを見回し、そこが自分一人の力で家まで帰れない場所であること、周りに母親の気配がないことに気付いた少年は涙ぐんだ―――だけでは済まず、大声で泣きかけた。
しかし、涙でぼやけた視界に派手に光る金色が映り、少年の興味は『自分が迷子になってしまった』という事実から、その目に入った『金色』に移ったのである。
ほとんどの子供は綺麗に光る物が好きで、それはその少年も例外ではなかった。少年は綺麗に光る金色をもっとよく見ようと、目に溜まった涙を両手で拭う。すると金色に光る綺麗な物は、沈みかけの夕日に照らされた人の髪の毛であることが分かった。正体が分かったところでキラキラと光る金色が綺麗であることに変わりはなく、少年は暫くの間そのキラキラを眺めていたが、今度はそのキラキラに触れてみたくなった。興味がある物には触れてみたいと思うのもまた子供らしい好奇心である。
少年は十メートル程の距離をとことこと歩き、手を伸ばせばキラキラに触れられる距離で立ち止まった。そのまま手を伸ばそうとしたものの、つい先程の買い物で商品に片っ端から手を触れて、母親から『人様の物を勝手に触ってはダメよ』と教えられたばかりであることを思い出す。
「………触ってもいい?」
少年はその『金色のキラキラ』の所有者に礼儀正しく問い掛けたが、返事は貰えなかった。相手は河原に腰を下ろして膝を抱え蹲っているため、顔が見えない。最初、少年は相手が眠っているのだろうかと思ったが、触れようとして手を伸ばした時、少年は相手が泣いているのだと分かった。嗚咽の声が聞こえた訳でも、相手の肩が震えていた訳でもない。ただ、あと数センチで触れるところまで近づいた相手から悲しみの感情が流れてきたのだ。
まだ四歳になったばかりの少年に複雑な感情が分かる筈もなく、これまでの人生―――と言っても四年だが――の中で見ず知らずの相手の感情が分かるというような経験をしたこともない。それでも少年は相手が泣いていることを疑わなかった。
「どうして泣いてるの?」
「………泣いてなんかいない」
ややあって、今度の問いには答えが返ってきた。ただし相手は俯いたまま顔を上げようとはしない。
「どうして嘘をつくの?」
「嘘をついてなんか―――」
相手はそう言って初めて顔を上げた。しかし、それで自分が嘘を付いていたことを暴露してしまった。カッとなって頬を染め声を掛けてきた者を睨み付けたものの、それが未だ五歳にも満たない少年だと知り、さすがに眼光を和らげる。それでも
「何でこんなところに子供が一人でいるんだよ?」
泣き顔を見られた気恥ずかしさからか、ややきつい口調でそんなことを言ったが、そう言った相手自身まだ十歳に満たないであろう子供であった。整った顔立ちに宝石のようなブルーの瞳。キラキラの金髪に負けない美しい瞳に暫し見とれていた四歳の少年は、相手の問いで自分の状況を思い出したらしい。
「僕、帰り道が分からなくなっちゃった」
「道が分からない? ああ、迷子か」
金髪の少年が面倒くさそうに立ち上がりながら、大して興味もないといった口調で言う。その声が冷たく聞こえたからか、それとも立ち上がった相手に置いて行かれると思ったのか、はたまた自分が迷子になってしまったことを改めて実感したのか。四歳の子供は大声を上げて泣き出したのである。これには金髪の少年の方が慌てた。迷子の少年に指摘されたとおり、彼は先程までこの河原で一人泣いていたのだが、その涙もすっかり引っ込んでしまう。
「分かったよ。分かったから泣くな。僕が家に連れて帰ってやる―――のは無理だから、警察へ連れて行ってやる」
彼は年下の子に泣かれるのが苦手だった。目の前の少年より少し年上の妹がいるせいでもあるが、まだ十歳に満たない身であるにも拘わらず彼はとても責任感が強く、目の前で自分より弱い者が泣いていたら、どうにかしてやらなければならない気になってしまうのだ。
彼の責任感の強さはその出自や育ちから来るものなのか、生来のものであるのかは分からない。その責任感が後年彼の人生を大きく変えることになるが、それはともかく、今、彼の責任感はこの年下の少年の涙を止める事に向いていた。少年が泣いている原因は、彼には全く責任のないことであるのだが……
「『けいさつ』って何? そこへ行くとお家に帰れるの?」
「お巡りさんがいるところさ。そのお巡りさんが君を家に連れて帰ってくれるよ」
家に帰れると聞かされて、迷子の少年は取りあえず声を上げて泣くのを止めた。まだ涙に濡れたまま見上げてくる瞳が『ほんとうに?』と問い掛けているように見えて、金髪の少年は苦笑混じりながらも笑顔を浮かべ、頷いてやる。しかし、そこで少年は思い出した。この町に来て未だそれほど間がない少年は、自分もこの町の警察の場所が分からない事を。
「………仕方ないな、一旦家に連れて帰るか。ラルに頼んで何とかして貰おう」
「ラルって誰?」
紅色のほっぺに涙の後が残ってはいるものの、すっかり泣きやんだ様子の少年が問う。その相手のほっぺを見て、自分の顔にも涙の跡が残っているのではないだろうかと心配した少年は、こっそり手で顔を拭いながら答えた。
「ラルはとても頼りになるよ。そうさ。警察なんかよりよほど――」
「ふーん……それ、お父さん? それともお母さん?」
四歳の少年にとって『頼りになる人』と言われれば父親か母親が頭の中に浮かぶのは仕方がない。しかし、その言葉は、ようやく笑顔が戻り書けた少年の顔を再び曇らせる。
「……母上は随分前にお亡くなりになった。父上もつい最近――」
まだ四歳で身近な者の死を経験したことがない少年には、告げられた言葉の重みが解らず実感もなかった。しかし相手の表情や雰囲気から、先程相手が泣いていた理由が『それ』であることは何故か分かった。
「………邪魔をしてごめんなさい」
思いもしない言葉を返されて、金髪の少年の青い瞳が驚きに見開かれる。四歳の少年が、自分が泣いていた理由を瞬時に理解し、泣いてるところを邪魔した事に対して謝罪したのだ。それにも充分驚いたが、『邪魔をしてごめんなさい』の一言で自分が相手の気持ちを理解出来たことにも驚いた。年齢に似合わぬ賢い子供であると言われ続けてきたが、こんな経験は初めてだ。
「不思議だな。君とは気が合うのかもしれない」
金髪の少年は、突然現れた迷子の少年の手を引いて歩き出す。
「気が合う?」
手を引かれるまま相手の後を歩きながら、迷子の少年が聞いた。
「分かり合えるってことだよ……って、君にはまだ少し難しかったかな」
首を傾げる年下の少年に向かって肩を竦め、金髪の少年はクスリと笑った。
「そう言えば、まだ名前を名乗っていなかったし、君の名前も聞いていなかったな。僕はキャ―――エドワゥ・マスだ。君は?」
「アムロ。アムロ・レイ」
「アムロか……良い名前だね」
本名を名乗れない事に罪悪感めいたものを感じエドワゥは相手の名前を褒めたが、あながちお世辞でもなかった。対して珍しい名前でもないのだろうが、自分で口にしてみると思った以上に響きが良い。
対する相手は『エドワゥ』の発音が難しいのか、エド、エドと繰り返すも、きちんと名前を口にすることが出来ないでいる。
「エドで良いよ。それか『兄さん』と呼べばいい」
幼馴染みやご近所の子供が年上の相手を『お兄ちゃん』『お姉ちゃん』と呼ぶのはそれほど珍しいことでもない。だからエドワゥも気軽にそう言ったのだが、兄弟のいないアムロにとってはとても嬉しいことのようだ。
「お兄ちゃんって呼んでいいの?」
目をキラキラさせて問う。
「いいよ」
どうやら自分はこの上目遣いに弱いらしいと、十歳にも満たない身でそんなことを考えながらエドワゥは優しい笑顔で言った。
それからお互いの年齢や、どうして迷子になったのかというようなことを話しているうちに、二人は大きな屋敷が並ぶ一画に辿り着いた。その一つの自分が住んでいる家の前で立ち止まり、エドワゥが真剣な口調で言う。
「僕が泣いていたこと、アル―――セイラには絶対に言うなよ」
不思議とアムロにはもう泣いていたことを誤魔化す気はなかった。そのアムロは再び首を傾げる。
「セイラって?」
「妹だよ。心配させたくないんだ」
「分かった。泣いてたことは内緒だね」
内緒の理由は分からないが、相手の気持ちは分かった。
「そうだ。男と男の約束だぞ?」
「うん、約束。絶対誰にも言わないよ」
四歳のアムロは笑顔で頷いた。
▶幼馴染み・After
《カテゴリ:単独で読める本@既刊詳細》
■シャア(とセイラ)がとアムロ幼馴染みだったら…という設定のCCA後のお話。
■幼馴染み・1st、Z、CCAの続編になります。1st、Z、CCAを既読の方に。未読の方は再録集6にAfter含め全編掲載されております。
■サンプル
νガンダムで大気圏突破をするという荒業で地球に降りてきたアムロとシャアをフォローしてくれたのはセイラだった。とは言っても、さすがにセイラ本人がνガンダムの落下地点へ来る訳にはいかなかったので、セイラの信頼を得た人物らが二人の移動手段などを確保してくれたのである。
シャアとアムロが幼い頃過ごしたあの家に戻ることが出来たのは、νガンダムとサザビーが宇宙から消えた三日後。その翌日にはセイラが二人を訪ねてきた。
「兄さんのバカっ!」
顔を見るなりそう言って容赦なく兄の頬を平手打ちした妹の瞳から涙が溢れ、兄は同じ色の目を細めて笑みを浮かべる。
「綺麗になったな、アルテイシア」
謝罪の言葉など期待してはいなかったが、幼い頃の優しかった兄そのままの口調で言われてしまうと、怒りを持続するのが難しくなってしまう。まだまだ言ってやりたいことが沢山あったのに―――
「何言ってる。セイラさんは出会った時からずっと綺麗だったよ」
兄への態度を決めかねているセイラに代わって、アムロがシャアに抗議した。
「まあ、ありがとう」
笑顔で言ったセイラは思わず感慨深げな様子で付け加える。
「あの可愛かったアムロが女性にお世辞が言えるようになるなんて」
一年戦争の時に再会して以降、成長したアムロの姿など見慣れていた筈なのに、この家で三人が揃ったせいだろうか。目の前のアムロにあの頃の面影を重ねてしまったのだろう。
「いつまでも子ども扱いですか? 僕、もう二十九ですよ」
苦笑して応じたアムロだが、微妙に変わった空気を察し慌てて付け加える。
「それに、お世辞じゃありませんから」
「褒めてくれるのは嬉しいのだけれど、年齢の話はよしましょう」
笑顔のままのセイラの機嫌が微妙に下がり始めたことには気づいたものの、理由までは察することが出来なかったアムロは思いきり冷や汗をかいた。
(これだからニュータイプの能力なんて役に立たないんだ)
ここは速やかに話題を変えようとアムロが口を開きかけたその時。
「なんだ? まだそんなことを気にするような年じゃないだろう」
兄が見事に妹の地雷を踏んだ。
「女性にとって三十歳超えることの意味は男性とは全然違うのよ。また平手打ちを食らいたくなかったら、よーく覚えておくことね、兄さん」
表情(かお)は笑っているが目は笑っていない。そんな妹に迫られて、シャアも自分の失言を悟る。同時に、この家で過ごした頃の――自分が守ってやらなければと思っていた妹の成長を実感した。
「強くなったな、アルテイシア」
「当然よ。兄さんの背中ばかり追いかけていたあの頃とは違うんですからね」
誇らしげに胸を張るセイラにシャアは眩しそうに眼を細め、アムロはそんな兄妹を少しばかり羨ましそうに見守っていたが、ふと見上げた天井からぶら下がっている物が目に入った。
(何だろう)
手を伸ばして取ろうとしたものの微妙に手が届かない。気付いたシャアがアムロの傍から手を伸ばした。
「何だ?」
手に取ったものを見てシャアが首をひねる。
「……くす玉…かな?」
シャアの手にあるのは紙を貼り合わせて作られた球状の物。埃を被り随分色あせているが昔はさぞカラフルだっただろう。
「あら、それ―――」
正体を見破ったのはセイラだった。
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